インフルエンザ菌とインフルエンザウイルスの違い
一般的な会話の中で「菌」と「ウイルス」は
同じように使われていることがあります。
でも実際は全く異なる物なのです。
菌とウイルスは何が異なるか?
また、どう使い分ければよいのか?
そして具体的に
インフルエンザ菌とインフルエンザウイルスの違いについて
みていきます。
菌とウィルスの違い
ウイルスのことを「細菌」と同じように考えている人が結構いますがウイルスは「ウイルス」であって「細菌」ではありません。
一番の大きな違いは、細菌には抗生物質が効くのに対し
ウイルスには抗生物質が効かないということです。
もちろん、細菌の中にも抗生物質が効かないものもありますが
これは抗生物質に対する耐性を細菌が獲得しただけで
初めに投与された時は効いていたのです。
しかしウイルスには初めから効きません。
それは、ウイルスには自分の体内に栄養を取り込んで成長・増殖する
という機能がないからです。
成長と増殖のエネルギー源となる物も異なります。
細菌は、感染した生物から栄養をもらって自分の力で増殖します。
栄養があって一定の条件がそろえば増殖できるので
生物以外のものにも取り付いてエネルギーを奪います。
これに対してウイルスは生きている細胞にしか取り付きません。
というのは、ウイルスは自力で増えることができない性質を有しているので
感染した細胞の力を利用し、増殖するのです。
ウイルスはその遺伝子をDNAあるいはRNAという形で
たんぱく質の殻を利用して運搬し特定の生物の細胞に入り込んで
遺伝子を構築します。
これが感染と呼ばれる現象です。
ウイルスが感染する細胞はウイルスの種類によって異なり
ヒトや動物の細胞に感染するウイルスもあれば植物に感染するもの
さらには細菌のような単細胞生物に感染するものと住み分けられています。
つまり、ウイルスは各々の生物の細胞壁の構造の違いを認識して吸着し
侵入した細胞内でウイルス生産用の遺伝子をつくり
さらにこの遺伝子を基にウイルスを大量につくり出すのです。
そのようにして、生きている細胞を利用することによって
次々と子孫を残してゆくのです。
下記の表に違いを簡単にまとめてみました。
菌 | ウイルス | |
---|---|---|
増殖の場 | 細胞がなくても増える | 動物の細胞内で増える |
抗生物質 | 効く | 効かない |
エネルギー生産 | する | しない |
分裂・増殖・蛋白合成 | する | しない |
核酸 | DNAもRNAもある | DNAかRNAしかない |
細胞壁 | ある | ない |
インフルエンザ菌とインフルエンザウイルスの違い
現在一般にインフルエンザといえばインフルエンザウイルスによる感染を表していますがインフルエンザ菌というものも存在します。
これは、1800年代の大流行の際にインフルエンザ患者の喀痰より発見され
原因菌と誤認され、インフルエンザ菌と命名されたものです。
その後、インフルエンザの真の病原体はインフルエンザ菌ではなく
ウイルスであることが判明しましたが
この菌が呼吸器に連結した部位での感染を引き起こすので、菌名として残されました。
では、インフルエンザ菌について見てみましょう。
インフルエンザ菌に罹患した症状は
時に中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎、肺炎などの気道感染を引き起こします。
またこの菌が血液中に侵入すると
敗血症、髄膜炎、結膜炎、急性頭蓋縁、関節炎などを引き起こす事もあります。
検査方法は、喀痰などを寒天培地へ塗沫することでコロニーを形成し
このコロニーを調べることで菌名を特定します。
ですから、検査結果の判明には3~5日かかります。
一方、インフルエンザウイルスは
急激に始まる高熱・関節の痛みや全身のだるい感じ
続いて鼻水や喉の痛み、せきなどが症状として出現します。
それに伴い、腹痛、嘔吐、下痢といった胃腸症状がみられる場合もあります。
検査方法は棒で鼻や喉の奥の粘膜を取って、検査キットで調べます。
30分以内に結果が分かり、A型、B型のウイルスの種類を判別することもできます。

インフルエンザウイルス
一般的に流行するインフルエンザウイルスも非常に恐ろしい病気ですが
インフルエンザ菌も、特に5歳以下の小児では
中耳炎、咽頭炎、肺炎そして骨髄炎の原因として知られています。
特に急性化膿性骨髄炎を引き起こすと、新生児では半数が後遺症を残し
約1割が死亡するという危険な感染症なのです。
ですが、Hibワクチンの予防接種で感染を回避することもできますので
お子様をお持ちの方は診療機関で相談をして下さい。
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